種の保存と研究
- 動物園内と野生での
種の保存 -
人間が住むために森や干潟を宅地や農地に変えるとそこに住む動物はいなくなります。また人間は動物を食べ物や薬として利用したり、狩猟やペットとして飼育する対象としています。人間の活動の影響で動物は数を減らしていま す。なかには、絶滅したり絶滅の危機に瀕している種類もたくさんいます。
絶滅の危機に瀕した動物を守る方法としては、その生息地の環境を保護し生息数を増加させる取り組みがもっとも必要とされます。しかし、戦争や都市化、密猟などの理由で生息地での保護の効果が上がらないこともあります。そこで飼育下で動物を増加させたり数を維持していくことも必要です。
また動物園自身も今日のように動物が少なくなっている状況では、野生から希少動物を安易に捕獲して展示することは自粛するべきでしょう。安佐動物公園では野生動物の種の保存のために、飼育下における繁殖に力を入れて取り組んでいます。
- 飼育下繁殖
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オオサンショウウオ
国の特別天然記念物オオサンショウウオが、1979年に安佐動物公園で初めて繁殖し、以来概ね繁殖を継続しています。
オオサンショウウオの保護のための研究については国内外から高い評価を受けており、1988年には日本動物園水族館協会から第2回古賀賞の表彰を受けました。
オオサンショウウオの血統登録管理を当園が受け持っています。クロサイ
クロサイの血統登録管理を当園が受け持っています。
日本で飼育しているクロサイの半数が当園の所有であったり、血縁関係にあるという状況になったため、外国の動物園とブリーディング・ローンを進めました。そして1999年、ハワイのホノルル動物園から雄のクロサイが来園し、その赤ちゃんも誕生して、血統の片寄りを解消することができました。レッサーパンダ
当園ではレッサーパンダの繁殖に取り組んでいます。血統管理者と連絡しながら、他園と動物を交換したり貸し借りしてたくさんの子どもが生まれるように努力しています。
当園のレッサーパンダは中国の重慶市からやって来た雄1頭と雌2頭が親となって、たくさんの子どもが生まれました。現在は、その子どもと他園からやってきたレッサーパンダで新しいペアを作り繁殖させています。コンゴウインコ類
コンゴウインコ類は大型のインコで当園ではコンゴウインコ、ヒワコンゴウインコ、ルリコンゴウインコなどを飼育展示しています。熱帯林の減少に伴い絶滅が心配されています。野生ではとくにコンゴウインコは大型のベニコンゴウインコに良好な巣穴を奪われ子育てがうまくいっていないといわれています。
当園ではルリコンゴウインコ、ヒワコンゴウインコ、コンゴウインコの繁殖は順調です。オウムの仲間のキバタンもよく繁殖しています。チンパンジーの人工繁殖
希少な動物で、雄と雌をそろえていても相性が悪く交尾をしないなどのケースがあります。こんな場合、雄、雌とも健康であれば、精液を採取して雌に授精するとか、体外で受精卵を作り雌に戻すなどの方法が可能です。
また精子や受精卵を液体窒素などの容器に保存しておけば動物が死んでも子孫が残せる可能性があります。このような医学的な試みは始まったばかりですが当園も積極的に参加していきます。
安佐動物公園では世界で初めて、死亡したチンパンジーの雄から採取した精子を使って人工授精し、妊娠出産に成功しました。 - ブリーディング
ローン
(繁殖のための
動物の貸し借り) -
希少動物が繁殖しない理由には病気や高齢によることもありますが、次の場合もあります。
- 1頭で飼育していたり、
- 片方の性の動物だけ飼育していたり、
- 群れで飼育しないと繁殖の可能性がないのに少数しか飼育していなかったり、
- 相性の悪い雄と雌であったり
- 環境がその動物にあわなかったり、
- その他
こうしてみると、動物の組み合わせをよくするだけで繁殖の可能性が生まれる場合が少なくありません。そこで、動物園どうしが協力して動物を貸し借りすれば希少動物を繁殖させる可能性が出てきます。そこで、現在では所有権を移動せずに、繁殖のために貸し出す「ブリーディングローン」が行われているのです。また、輸送費を負担してでも動物の貸し借りを進めています。
繁殖に成功したときは、契約にもよりますが奇数番目の子を繁殖させた園の、偶数番目の子は貸し出した園の所有とすることが多いようです。
希少動物については動物の種別に繁殖調整者を定めて、単に繁殖のためだけでなく近親繁殖にならないように血統を考慮した組み合わせをするなどの工夫がされています。