組織と理念
概要
- 広島市安佐動物公園
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広島市安佐動物公園は、広島市北部の山麓に広がる緑豊かな動物公園として、1971年9月1日に開園しました。開園当初は動物展示の面積は、敷地49.6ha(現在は51.38ha)のうち14haでしたが、1985年、西園整備により 23.2ha(現在では25.6ha)に拡張されました。
施設や動物の管理は、1986年度から広島市が委託した財団法人広島市動物園協会(1999年度からは財団法人広島市動植物園・公園協会)が行ってきました。2012年度からは公益法人改革に伴い改組した「公益財団法人 広島市みどり生きもの協会」が指定管理者になっています。設置根拠 広島市安佐動物公園条例
(広島市例規類集第12類建設及び港湾第6章公園・広場をご覧ください。) - 初代園長の言葉
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動物園は平和のシンボルであります。そこにはすべての生きものが平等に生きる権利を主張し合いながら仲良く暮らしている姿が見られます。
人間はその発達した知恵によって、あらゆる生物をしのいで地球上を制する力を得ました。しかしその人間は余りにも我がままな生き方をしようとして、自分たちだけ良ければよいようなことをしたり、隣り合った者たちが争いを起こしたりするようになりました。その結果はいろいろな公害や戦争による荒廃として人間自身が苦しまなければならないようになりました。そして今、人間は自身の知恵によって公害をなくし、平和を実現する唯一の方法は、あらゆる生きものを含む自然を大切にしなければならないことを再発見しています。
広島市はその平和を実体とする都市づくりをしています。その一つに永い間市民の待望していた豊かな緑と真実にみちた安佐動物公園を開設いたしました。
安佐動物公園はたくさんの野生動物が健康に生活する姿を通じて、生命の尊さを知ることこそ真の平和を得る方法であると主張します。
初代園長 小原二郎
開園当初のパンフレット「広島市安佐動物公園 入園のてびき」(1975年)より - 教育活動
の場として -
動物科学館
「動物の体と暮らし」をテーマに1987年、動物科学館が開館しました。館内にはアフリカゾウの全身骨格標本、動物の体の仕組みをわかりやすく解説した装置、動物の能力を体験できる装置などのほか、図書コーナーがあり、楽しみながら学習することができます。2階のホールでは団体を対象に動物や動物公園のお話をする「動物レクチャー」やビデオの上映などをおこなっています。また、動物科学館で収蔵している、頭骨標本を中心とする多種多様の標本は学校に貸し出され、授業に活用されています。動物レクチャー・学習プログラム等の開催
動物愛護と自然保護への関心と理解を深めるための体験型プログラムとして、幼児から大人までを対象にした「動物レクチャー・学習プログラム」、小学校4~6年生を対象にした「サマースクール」などをおこなっています。なかよし動物教室の開催
保育園・幼稚園児を対象に、ヤギ・テンジクネズミとのふれあいやポニー乗馬を実施し、動物への関心と愛情を育むとともに、正しい動物の扱い方を身に付けさせるための「なかよし動物教室」を開催しています。動物愛好者の育成
動物や自然の理解者を増やすため「広島動物愛好会」を組織し、2か月に1回の例会と、年2回の自然観察会を開催しています。また、年1回、広島市植物公園、広島市森林公園昆虫館と共同で市民からの公募による「あおぞら自然観察会」を開催しています。ASA ZOOボランティア
動物たちはたくさんの情報を発信していますが、ただ動物を眺めるだけではなかなかそれに気付きません。安佐動物公園では2003年度から、動物の暮らしや不思議をお客様に伝える活動をASA ZOOボランティアが始めました。 - 自然保護
の場として -
希少動物の種の保存
野生動物の保護と希少動物の種の保存のために、飼育下における繁殖に取り組んでおり、これまでグラントシマウマ、レッサーパンダ、ユーラシアカワウソなど多くの動物において日本有数の繁殖実績を残し、国内の動物園における野生動物の供給センター的な役割を果たしています。
国の特別天然記念物オオサンショウウオは、1979年に安佐動物公園が日本で初めて繁殖に成功し、以来ほぼ毎年繁殖を継続しています。このことは国内外から高い評価を受けており、1988年には日本動物園水族館協会から最も栄誉ある第2回古賀賞を受賞しました。また希少動物のクロサイはこれまでに18頭の子どもが生まれ育っており、他園の繁殖を助けるために本園生まれの個体を各地に貸し出しています。この業績が認められ、1995年に第9回古賀賞を受賞しました。
グラントシマウマでは、累代繁殖と卓越した群れの飼育技術が認められ、2012年に第26回古賀賞を受賞しました。
さらにチンパンジーでは、雄の死後に採取して冷凍保存していた精子を用いての人工授精に世界で初めて成功し、1998年に雌の子ナナが誕生するなど、人工繁殖の研究もしています。動物の調査・研究
動物の適正な飼育・繁殖・展示のために、飼育動物と地域の野生動物の調査・研究に取り組んでいます。特にオオサンショウウオの野外調査は、飼育下繁殖の成功になくてはならない重要な情報をもたらしました。そのほか、カエルやコウモリ、モグラなどの調査研究を続けており、それらの研究成果を出版物や学会誌、マスコミを通じて市民に還元しています。野生動物の救護
市民により保護された、傷ついたり弱ったりしている野生動物を治療し、野生に帰す仕事もしています。 - レクリエーション
の場として -
安佐動物公園は荒谷山のふもと、標高約200mに位置しており、緑豊かな環境に恵まれています。春はサクラ、ツツジ、フジなどの花が咲き誇り、夏は緑の木陰、秋の紅葉、冬は雪上に残された動物の足跡など、四季折々の楽しさにあふれています。1985年に開園した西園は、家族そろってお弁当を広げられるピクニック広場や散策路を備えています。2001年にリニューアルオープンしたこども動物園は「ぴーちくパーク」の愛称で親しまれ、動物とのふれあいを楽しむ子どもたちでにぎわっています。広々とした公園、のんびりとした動物の姿は人々の心をなごませ、明日への活力を生み出す安らぎの場として愛されています。
- 動物取扱業登録
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公益財団法人広島市みどり生きもの協会
広島市安佐動物公園(広島市安佐北区安佐町大字動物園)
展示業 第324号 登録年月日 平成19年5月31日 有効期間末日 令和9年5月30日
動物取扱責任者 森田 不二子
動物の飼育・展示について
- 動物展示等の方針
- 野生動物を動物園のような教育的な施設で飼育する場合に、動物を展示だけでなく、野生と同じような行動を引き出し、生き生きと生活する様子を観覧できるようにすることが求められています。安佐動物公園では時代に即して動物の展示や収集の方針を次のように考えています。
- ■動物の並べ方
- 基本的にアフリカとアジアの動物を分けて展示しています。このように生息地ごとに動物をまとめる展示方法を「動物地理学的展示」といいます。一方で、アフリカのライオンとアジアのトラを並べて展示している部分もあります。同じネコ科の動物で形や習性が似ているので比べて見ることに重点をおいています。このような展示方法を「分類学的展示」といいます。爬虫類をまとめて展示しているのも分類学的展示です。これには同じ場所にまとめて飼育した方が飼育がしやすいといった理由もあります。
- ■広い展示空間で
行動を引き出す - 全ての動物が「全速力で走れ安全に止まれる」ことを新しい目標に機会あるごとに改善を進めています。当初から広い敷地を生かした約7000平方メートルのサバナ平原ではキリン、ダチョウ、シマウマが走る姿を見ることができます。クロサイの放飼場も広く10分以上もサイが止まらないで走っていることがあります。こうした広い空間こそがもっとも基本的な動物に対する福祉であると考えています。現代の基準では狭いと考えられる動物施設に対して、とりあえず種類を減らしてでも広い空間にしています。オランウータンの展示を止めて、チンパンジーが2個分の空間を利用できるようにするなどの工夫をしています。
- ■間近で見られる
- 動物が望んで観客の近くにやってきて姿や生態を見せてくれる。そんな驚きと親しみのある展示を目指しています。開園当初から柵やおりの代わりに空堀(モート)で観客との間を分ける方法を多くとり入れています。これにより、目線をさえぎらない開放感のある展示が可能になり、観客は野生の生息地にいるような感覚を持つことができます。一方で、動物が空堀を飛び越えないよう安全距離をとる必要があるため動物を少し遠くに見ることになっていました。そこを強化ガラスなど最新の素材を使い間近に動物を見られるように改善を進めています。ライオン舎では、空掘に橋を架けてライオンが寄ってこられるようにするとともにガラス越しに観察できる「レオガラス」を整備したことにより、間近に見ることができるようになっただけでなく、ライオンの生活空間を広げることができました。
- ■群れでの展示
- 広い敷地を有効に利用して、群れで生活する動物は群れで飼育し展示しています。このことによって動物の家族関係や群れの関係、大人がいる中での子どもの成長など動物本来の行動を見ることができます。もちろん繁殖成績も群れ飼育により良好です。シマウマ、アヌビスヒヒ、ケープハイラックスなどで群れ展示を実現しています。
- ■動物の繁殖
- 安佐動物公園はクロサイやオオサンショウウオを始め高い繁殖成績を誇っています。動物を広い場所で飼育する、木の葉など動物に適した飼料を与える、動物の習性を考えた飼育をするなど、常に動物のことを考えた飼育を心がけています。また、クロサイやオオサンショウウオなど特定の種ではバックヤードの繁殖施設を持つなど、動物の継続的な繁殖に努力しています。
- ■動物の収集
- 開園当初からアフリカ産の動物とアジア産の動物を中心とした展示を行っています。身近な日本産の動物の展示が充実していることも大きな特長です。大型インコ類やは虫類などで南米や北米の動物も見ることができます。施設の大幅な変更は困難ですし、現在のゾーニングに合わせて動物を終生飼育することを前提にしながら、機会があれば適切な動物を導入していきます。