飼育係のasazooブログ! 動物の様子や飼育の話題など安佐動物公園の日々の様子を飼育係がお届けします!

2023/05/08国際専門誌に論文を発表しました!

皆様こんにちは。じゃいです。

 

安佐動物公園でのシンポジウムに関する研究が論文として発表されたので、

今回はその中身をご紹介したいと思います。

 

安佐動物公園では、2014年から「オオサンショウウオ共同研究シンポジウム」を開催しています。

国内外の研究者と安佐動物公園の共同研究で明らかになった、オオサンショウウオの最新の知見を皆様にお伝えする場です。毎年のイベントとして定着してきたこのシンポジウムですが、近年ある大きな変化がありました。それは、ずばりオンライン化!

2019年までは園内の科学館ホールで開催していましたが、コロナ禍で2020年度は中止に。そして2021年度はZoomによるオンライン開催、2022年度はオンラインと現地のハイブリッド開催を試みました。

  

2022.jpg(2022年シンポジウムの様子)

  

一貫したテーマで続けているこのシンポジウムは、現地開催とオンライン開催の両方を経験している、

実は貴重なケースだったりします。

そこで2016年度以降の参加者アンケートを現地開催の回とオンラインの回とで比較して、それぞれの開催方式の特徴を発見したぞ!というのが今回の報告です。

具体的には、下の図のような特徴があることがわかりました。

  

ブログ用の図.jpg

  

つまりオンラインで開催すると、遠方在住で安佐動物公園を訪れるのが難しい方は参加しやすくなる一方、

普段から安佐動物公園に訪れてくださっている地元の方や若い方にとっては、現地開催の方が積極的に参加しやすい...という傾向が見えてきました。

幅広い層の方々に参加していただくためには、両方を兼ね備えたハイブリッド開催が良さそうですね!

ただし、講演会場からWeb配信も行うハイブリッド方式は機材の準備が必要で、当日マイクの声が聞き取りにくいというコメントが多くありました。

多くの方が参加しやすいハイブリッド形式を維持しつつ、配信環境や設備を整えていくことが今後の課題だと言えます。

 

これらは決して「驚きの大発見」ではありません。運営や参加者としてオンラインのイベントに関わったことがある方なら、直感的に感じたことのある傾向だと思います。

ただ、その傾向を数値で実証するためには「オンラインか現地か」以外の条件をできるだけ均一にした上での比較分析が必要です。しかしオンラインイベントのほとんどはコロナ禍後に企画されたものなので、適した比較対象が無く、意外と検証するのが難しい問題でした。実際、こうした比較分析をした報告は世界でもほとんど例がありません。

 

そんな中で、オオサンショウウオという同一のテーマで長く続けてきたこのシンポジウムだからこそ、コロナ禍の前と後、現地開催とオンライン開催とを比較することが可能でした。

今回はその重要性が認められて、ヨーロッパ動物園水族館協会が発行する学術専門誌に論文を発表することができました。

これも多くの方がシンポジウムにご参加いただき、アンケートに回答いただいたからこその成果です。

 

anke.jpg

全部で408件の回答を分析できました。これまでご参加いただいた皆様、本当にありがとうございました!

 

多くの方にとって動物園は「動物を見て楽しむ場所」「動物について知り学ぶ場所」というイメージが強いと思います。ですが、実はこのように様々な分野に関する研究活動の場でもあり、解明したことを世界へと発信する場所でもあります。

今後も様々な研究に取り組みつつ、その成果を皆様にご紹介していけるように頑張りますので、

これらの取り組みも応援いただけたら嬉しいです。

 

ちなみに、オンラインではSNSでシンポジウムの存在を知った方が多いとか、チラシ配布による広報が地元の参加者には重要そうだとか、論文中ではもう少し細かな分析も行っています。

もっと詳細が知りたい!という方は、下記のリンクから論文を御覧になってみてくださいね。

 

それでは!

じゃい

 

【発表雑誌名】Journal of Zoo and Aquarium Research(論文リンク)

【論文タイトル】Profiling and comparing participants of online and on-site educational programmes: Case study of the symposium on giant salamander in Hiroshima City Asa Zoological Park, Japan

【著者】Wataru Anzai, Koshiro Hara, Noriyuki Nonoue, Yuki Taguchi, Hiroshi Kamada, Nobuyoshi Minamigata, Katsuhiko Abe, Shinji Minami