飼育係のasazooブログ! 動物の様子や飼育の話題など安佐動物公園の日々の様子を飼育係がお届けします!

2020/08/30忘れないでね、ハイラックスのこと8

   

   

皆様こんにちは!ハイラックス担当です。

   

    

  

さて、今回から少しだけですが、ハイラックスの体のことを紹介していきます!!

    

   

今回は、歯に注目してみましょう!

   

2.jpg

これがハイラックスの頭骨です。

そして、上下の顎(あご)を口の中側から見ると・・・

  

図1.jpg

上あご

図2.jpg

下あご

   

歯式(歯の並び)は、上あごが門歯1対・前臼歯4対・後臼歯3対となっています。

下あごは門歯が2対で、前臼歯と後臼歯は上あごと同じ数だけあります*。

   

門歯は、いわゆる前歯にあたる部分であり、

エサとなる植物をちぎり取ることなどに使われます。

     

臼歯(前臼歯と後臼歯)は、いわゆる奥歯で食べ物をすりつぶすのに使われます。

   

そしてこの歯の中で、なんといっても特徴的なのは上の門歯ですね!

何度かブログ内でも紹介しましたが、鋭くとがっています。

(わかりやすくするため、ここでは牙と呼ぶことにします。)

     

基本的には、オス同士の闘争で用いられますが、

天敵などを威嚇するときにも使うことがあります。

そのため、メスにも牙があります。

(上の頭骨は、メスのものですが立派な牙がありますね。)

   

図2.jpg

   

この牙ですが、なんと一生伸び続けます!!

    

   

「上の門歯だけが、一生伸び続ける動物」でピンときた人はいますか??

   

   

    

   

そう!ゾウです!!

ゾウの上の門歯・・・それはまさに、牙です。

ゾウの牙も、ハイラックス同様に一生伸び続けます。

  

図6.jpg

  

ゾウやハイラックスの牙のように、一生伸び続ける歯を無根歯(常生歯)と呼びます。

  

こちらをご覧ください。

  

図4.jpg図3.jpg

上がハイラックスの牙、下がゾウの牙

    

形もさることながら、どちらも根元に空洞(歯髄腔)があることが共通しています。

ここには、歯を形成する細胞などの柔らかい組織が詰まっており、

歯を形成し続けることができるのです。 

そのため、標本にしたとき、それらの組織が溶けて無くなり、空洞になります。 

  

    

では、一生は伸び続けない(成長が止まる)歯はどうなっているのでしょうか。

下の写真は、ライオンの犬歯です。立派な牙ですね。

  

10.jpg 

図7.jpg

根元を見てみると・・・空洞はありませんね!

  

もっと身近な例でいうと、私たちヒトの成長が終わった永久歯も

根元の空洞は閉じています。

(成長途中の歯には、ちゃんと空洞があるようです。)

もし、何かの拍子で歯が抜けてしまったときは、ぜひ観察してみてください!

  

   

ちなみに・・・

   

  

ハイラックスやゾウには、犬歯がありません。

ライオンの牙は犬歯、ハイラックス(とゾウ)の牙は門歯です。

  

合わせて覚えてくださいね!!

   

  

ハイラックスとゾウの牙、

大きさは全然違いますが、形は少し似ているかな・・・?

  

5.jpg8.jpg

   

  

上の門歯が特徴的なので、長くなってしまいました・・・

次回、もう少しだけ歯を見ていきます!お楽しみに!

                   

                                 HR

   

    

*Olds and Shoshani, 1982. Procavia capensis., Mammalian Species, 171, pp. 1-7.