2021/07/10忘れないでね、ハイラックスのこと11
皆様ご無沙汰しております!ハイラックス担当です。
更新が大変遅くなり、申し訳ございません・・・
少し間が空いてしまいましたが、
今回も「肢(あし)」について解説していきます。
これまでの話忘れた・・・という方はぜひ過去のアーカイブをご参照くださいm( . . )m
突然ですが、哺乳類の肢のつき方は、次のように大きく3つに分けられます*。
・「蹠行(せきこう・しょこう)型」
・「指行(しこう)型」
・「蹄行(ていこう)型」
まず、蹠行型の動物とは、
「指からかかと(手首)まですべてが地面につく動物」のことです。
最も分かりやすいのは、わたしたち「ヒト」ですね!
これらの動物は速く走ることに向いていませんが、
足の裏がべったり地面に着くことで比較的安定して立つことができる
という特徴があります。
ピンときた方はいますか??
そう!かつて一世を風靡したレッサーパンダやクマも
蹠行型の動物に含まれるので、あんなふうに立つことができるんですね!
かかと(矢印)がしっかりと地面についていることが分かります。
次に、指行型の動物はというと、
「かかと(手首)が浮き、指だけが地面につく動物」です。
代表的な動物にイヌやネコが含まれます。
アムールトラの後肢
かかと(矢印)が浮いていることが分かります。
これらの動物は、瞬発性に長け、速く走ることができる特徴があります。
そして、もう1つ利点があります。
私たちが「忍び足」をするとき、かかとをあげますよね?
つまり、静かに歩み寄ることができるのです。
まさに狩りをするハンターに適した肢の構造と言えるでしょう。
最後に、蹄行型の動物とは、
その名の通り、「指先にある蹄(ひづめ)で肢を支える動物」です。
ウマやキリンなど多くの草食性動物が含まれます。
グラントシマウマの後肢
かかと(赤)はかなり上部にあり、ひづめ(青)で立っています。
この構造は長く速く走ることに適しています。
まさに、食う・食われるの関係で肢の構造が進化してきたことが伺えますね!
さて、前置きが非常に長くなってしまいましたが、
本日の主役・ハイラックスはどれに分類されると思いますか???
逃げ足は早そうですが・・・
ででん!!我々ヒトと同じ「蹠行型」だそうです**!
確かにかかと(矢印)が地面についていますね。
と、納得しかけたそのとき・・・
あれ??ちょっとかかと(矢印)が浮いてる??
実際に歩いている様子を観察すると、前肢はしっかり地面につくのに対して
後肢はしっかりと地面についていないようにも感じます。
採餌中のハイラックス
もう少し調べてみると・・・
なんと「前肢は蹠行型で、後肢は半蹠行型」と書いているではありませんか***!!
半蹠行型とは、かかとはつかないが、指だけではなく
足裏の大部分が地面につく動物のことのようで、
ヒトや類人猿以外のサル類の多くが含まれるのだとか****。
つまり、ハイラックスの肢のつき方は「蹠行型」ですが、
後肢に関しては、かかとが浮き気味で「半蹠行型」と考える場合もある。
というのが答えでした!!難しいですね笑
もしかすると、速く走るのではなく、
岩山に身を隠すために、すべりにくい足裏を発達させてきた
でもやっぱりすばやい動きも必要で、かかとが少し浮いてきた・・・
のかもしれませんね!(私の個人的見解です)
ちなみにハイラックスもかなり短い時間なら立つことができますが、
やはりレッサーパンダやクマほどの安定感はありません。
こんなふうに動物の体からその動物の暮らしが垣間見れることもあります。
ハイラックスは現在非公開ですが、他にもたくさんの動物を飼育していますので、
ぜひ動物園に足を運び、ゆっくり観察してみてくださいね!
今回は以上です!
次回は体編ラストです!お楽しみに!
HR
*Kent,G.C., Carr,R.K.(谷口和之, 福田勝洋訳, 2015). ケント 脊椎動物の比較解剖学 原著第9版. 緑書房, 東京, 226-227.
**IUCN Afrotheria Specialist Group ., online. HYRAXES Order Hyracoidea. http://www.afrotheria.net/Hyracoidea.html (accessed on 2021-July-9)
***Olds,N and Shoshani,J. (1982). Procavia capensis., Mammalian Species, 171, pp. 1-7.
****後藤遼佑:霊 長 類 の 足 関 節 力 学 的 機 構 に 関 す る
機 能 形 態 学 的 研 究. 大阪大学.
↓より詳しい情報は以下の文献を参照
Schmitt, D. and Larson, S.G. (1995). Heel contact as a function of substrate type and speed in primates. American Journal of Physical Anthropology, 96, 39-50.