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2020/05/12はちゅうるい館の仲間たち(6)ボールニシキヘビ

皆さんこんにちは。じゃいです。

だんだんマニアックになってきたと噂の、はちゅうるい館の仲間たちシリーズ。
今回もマニアックに、ボールニシキヘビを紹介したいと思います。


DSC_0011.JPG

 

危険を感じると、ボールのように丸くなるのが名前の由来と言われています。
アフリカ大陸中央部~西部のサバンナや開けた森林に生息しており、
ネズミなど地上性の小動物を捕まえて食べています。
成体の全長は120~180cmぐらい。ペットとしても人気なヘビです。

 

...ところで、彼らの"しっぽ" がどこか、わかりますか?
「え、そもそもヘビに しっぽ なんてあるの?」と思われるかもしれませんが、
ヘビの体も、ちゃんと胴体と尾が区別できるんですよ。
ちょっと他の動物と比べて、考えてみましょう。

 

ヘビの尾.jpg 

 
イヌやトカゲの尾はどこでしょう?
そう、お尻から後ろに生えている、細長い部分が尾ですね。
足がある動物は、お尻の場所がわかりやすいので、胴体と尾の境目もひと目でわかります。
ヘビのお尻はどこでしょう?足がないので、ひと目ではわかりませんが、

うんち を出すための、お尻の穴がちゃんとあります。
鳥や爬虫類、両生類では、糞・尿・卵などが全て同じ穴から出るので、

この穴のことを「総排泄腔(そうはいせつこう)」と呼びます。
ボールニシキヘビの総排泄腔は...
  

ボールcloaca.jpg 

 
ここにあります!
この総排泄腔より前が、胴体。後ろが、尾。というわけですね。
よく見ると、体の形もちょうど総排泄腔のあたりで細くなっています。
それにしてもボールニシキヘビの尾、短い!胴体、長い!ですね!
実は、胴と尾のバランスはヘビによって違っています。
高い木の上で生活をするヘビほど尾が長い傾向にあり、体の半分が尾だという種類もいるんです*。

 

もう一度ボールニシキヘビの総排泄腔の脇をよく見ると...1対の突起がありますね。
一部のヘビにみられる蹴爪(けづめ)と呼ばれるもので、実は退化した後ろ足の痕跡なんです!
小さいですが骨もありまして、ここがヘビのお尻であることの証拠でもあります。

 

さて、ヘビの後ろ足の位置がわかって、胴と尾の境目もわかったところで、
前足も気になりませんか?ヘビの首ってどこか、気になりませんか?気になりますよね。

 

実は、わからないんです。
不思議なことに、前足や肩の痕跡は、世界のどのヘビからも見つかっていません。
さらに、筋肉の配置、脊椎骨の形、遺伝子の発現部位...などを調べて"ヘビの首"を決めようとしても、
それぞれの基準によって、バラバラの結果になってしまうんです**。
決して「無い」わけではありません。が、現代の科学では「ここからここまで!と断言できない」のが

ヘビの首なんです。ロマンですね~。

 

P1130729.JPG

 

将来、前足が退化する前でまだ残っている、ヘビの祖先の化石!

なんてものが世界のどこかで発掘されたら、この謎は解けるかもしれません。
それまで「ヘビの首ってどこだろう...」なんて考えながら、

彼らをぼーっと眺めているのも悪くない時間の過ごし方、じゃないでしょうか...?

それでは、また次回!

じゃい

 

*Sheehy et al., 2016. The evolution of tail length in snakes associated withdifferent gravitational environments. Functional Ecology, 30: 244-254.

 

** Tsuihiji et al., 2012. Finding the neck-trunk boundary in snakes: Anteroposterior dissociation of myological characteristics in snakes and its implications for their neck and trunk body regionalization. Journal of Morphology, 273: 992-1009.