飼育係のasazooブログ! 動物の様子や飼育の話題など安佐動物公園の日々の様子を飼育係がお届けします!

2020/05/17はちゅうるい館の仲間たち(7)ヨーロッパアシナシトカゲ

こんにちは! じゃいです。

臨時休園が続いていた安佐動物公園は、明日18日から開園が決まりました。

が、屋内で「密」になりやすい はちゅうるい館 は、もうしばらくお休みですので、

この連載も、まだまだ続けたいと思います。

今回は、ヨーロッパアシナシトカゲを紹介します。

 

P1130807.JPG

 

別名としてヨーロッパヘビトカゲ、バルカンヘビガタトカゲとも呼ばれます。

いずれの名前でもわかるように、ヘビのように足のないトカゲです。

アシナシトカゲの仲間では最大種で、全長130cmになるという記録もあります。

ヨーロッパ南東部のバルカン半島からアジア西部まで分布しており、

草原や乾いた林、岩場などで、昆虫類、ミミズ、カエルや鳥の卵などを食べて生活しています。

 

「ところで、足のないトカゲって、ヘビじゃないの?」

 

と、多くの方が思っているのではないでしょうか。

アシナシトカゲは確かに「ヘビの仲間」ではなく「トカゲの仲間」なんですが、

そもそも、ヘビとトカゲは全く別の仲間、というわけではありません。
例えば私たち「ヒト」は、遠い昔にサル類の一部から進化した、たくさんいるサルの仲間ですよね。
同じように、ヘビもトカゲ類の一部から進化した、たくさんいるトカゲの仲間なんです。

 

足のないトカゲ.JPG

 

広い意味での「トカゲの仲間」は、上の図のようにまとめられます*。

ワニやカメは爬虫類ですが「トカゲの仲間」ではなくて、

ヘビ、ヤモリ、カナヘビ、イグアナなどは「トカゲの仲間」に入ります。

そのうち「足のなくなった仲間」の名前を赤枠で囲んでみました。

ヘビとアシナシトカゲの仲間は、近い親戚ではないようですね。

さらに、ヒレアシトカゲ類、ミミズトカゲ類、フタアシトカゲ類なども、それぞれ足のない種類です。
この3つはなかなか日本でお目にかかることはできない、珍しいグループですが、
「足のないトカゲ」は、決してヘビだけじゃなく、色々いるんですよ!

 

そして、その中で特に種類が多くて、世界中に生息しているのが、ヘビの仲間なんです。
「足がない」こと以外にも、ヘビにだけみられる特長がありまして...

 

① 目が透明の鱗で覆われていて、まぶたがない
② 外耳(耳の穴)がない
③ アゴが左右で別れていて、大きな餌を飲み込める

 

この3つの特徴を全てもっているのは、ヘビだけです。
アシナシトカゲにこれらの特長があるか、見てみましょう。

 

アシナシの顔.jpg

左がアシナシトカゲ、右がヘビ(ボールニシキヘビ)です。

 

アシナシトカゲの顔をみると・・・ 
① 目は覆われていませんね。
② 耳の穴もあります。
③ アゴは狭く、小さいです。

やっぱり、アシナシトカゲはヘビではないようですね。

ちなみに、前回のブログでお話した足の痕跡を探してみると、

アシナシトカゲの体には、前肢の骨も後肢の骨も痕跡として残っています。

このあたりもヘビとは違うところですね。

 

そして、これはアシナシトカゲの特長ですが、体の脇に1本の すじ が見えるでしょうか。
ここには下側の皮が重なって折りたたまれています。

大きな餌を飲み込んだときはこの重なりを伸ばして、体を広げると考えられています。
その証拠に、この筋は消化管の出口、つまりお尻の穴(総排泄腔)のところで途切れています。

 

アシナシのすじ.jpg


こうした形をもっているので、ヘビと同じように、大きな餌を飲み込むこともありそうです。
ヘビではないですが、ヘビとの共通点も「足がない」だけではないようですね。

 

ちなみに、目が透明な鱗で覆われているトカゲや、耳の穴がないトカゲは、ヘビ以外にもいます。
ヘビの特長は、①②③全てが揃っていることですので、間違えないようにしましょう!

  

ヘビなようで、ヘビではない不思議な生き物、ヨーロッパアシナシトカゲ。
動き方も、ヘビほど柔軟性がなく、やや不器用で可愛いらしい一面もあります。
どのあたりがヘビと違うのかな?どのあたりがトカゲっぽいのかな?と、じっくり観察してみてくださいね。

 

それでは、また次回!

じゃい

 

 

* Zheng & Wiens, 2016. Combining phylogenomic and supermatrix approaches, and a time-calibrated phylogeny for squamate reptiles (lizards and snakes) based on 52 genes and 4162 species. Molecular Phylogenetics and Evolution, 94: 537-547. の系統樹を参考に作成