2020/05/20はちゅうるい館の仲間たち(8)ケニアスナボア
こんにちは!じゃいです。
再開園した安佐動物公園、たくさんの方にいらしていただいています。
手洗い、マスク、ソーシャルディスタンスなどの自衛を徹底しつつ、お楽しみいただければと思います。
さて連載8回目、今回はケニアスナボアをご紹介します。
成体で全長は60cmほど。黒い斑紋が入った、オレンジ色で太く短めな体が特長です。
アフリカ大陸北東部の、砂漠やサバンナに生息しています。
「スナボア」の名前の由来は、砂の中に潜ること。
顔の先端だけ地面に出した状態で、体は砂の中に隠して、
ネズミや小鳥、トカゲなどの獲物が目の前を通るのを待ち伏せします。
スナボアに気付かず目の前を獲物が通ると、噛み付いた上、一瞬で巻き付いてしまいます。
また、砂に潜っていても周りの様子を見られるように、目は顔の上の方についています。
これだけでも面白いヘビですが、さらにもう1つ面白いのは、
このヘビ、卵ではなく、赤ちゃんを産むんです!
ヘビ、トカゲ、ワニ、カメなど爬虫類の仲間は、基本的に卵を産んで、子孫を殖やします。
が、ケニアスナボアはお腹の中で卵が孵って、ちゃんとヘビの姿をした赤ちゃんが産まれます。
20cmぐらいの赤ちゃんヘビを、1度に10~20匹ほども出産するんです。面白いですね~
と、さも珍しいことのようにお話ししましたが...
実は、この「赤ちゃんを産む爬虫類」、結構たくさんいるんです。
私たち哺乳類のように、母親のお腹の中で育った赤ちゃんを出産する動物を、胎生 (たいせい) といいます。
一方で多くの爬虫類や鳥のように、卵を産んで、卵から仔が生まれる動物は卵生 (らんせい) といいます。
世界の爬虫類は、全部で10,000種類以上が知られていますが*、
その中でケニアスナボアのような胎生の爬虫類は約20%、つまり2,000種ほどもいると言われています!**
数にしてみると、全然珍しくないですね~
ところで、胎生の爬虫類はなぜ卵でなく、赤ちゃんを産むんでしょう。
理由は色々ありますが、住んでいる環境が関係していることが多いと考えられています。
胎生の爬虫類がどのようなところに住んでいるかというと、例えば...
ケニアスナボアのように、地中で生活することが多い種類。
ウミヘビのように、海の中で一生をすごす種類。
コモチカナヘビのように、寒い地域に分布している種類。
こうした場所に胎生の種類が多いのですが、彼らの共通点がなにか、わかりますか?
そう、卵が生きていけない環境なんです。
空気がないと卵も窒息してしまうので、地中や水中に卵を産むこと
でも、お母さんのお腹の中なら、酸素も栄養もお母さんからもらう
また、砂漠では卵は干からびてしまいますし、雪山では卵は凍って
でも、お母さんのお腹の中なら、温度も湿度も安定して保たれてい
つまり、卵では死んでしまうような環境に住んでいても、お母さん
こうした厳しい環境に生息するトカゲやヘビには、胎生の種が多く知られています。
逆に言うと、胎生に進化した爬虫類は、厳しい環境でも生きられるようになった、ということになります。
とはいえ、厳しい環境ばかりでなく、日本に住むニホンマムシも、実は胎生のヘビなんです。
また、砂漠に住んでいるのに、胎生の仲間から卵生へと戻るように進化したスナボアもいます***。
教科書に書いてある「爬虫類は卵を産む生き物」は決して間違いではないのですが、
彼らも色々な方法をとっていて、例外が意外と多いことも、あわせて覚えてくださいね。
安佐動物公園のケニアスナボアは現在1匹だけなので、
残念ながらしばらく赤ちゃんヘビを見ることはできなさそうですが、
いつの日か見られるかも?という期待を込めて、ぜひ会いに来てくださいね。
きっと、砂から顔を出して迎えてくれると思います。
それでは、また次回!
じゃい
*http://www.reptile-database.org/ によると、11,050種(2019年8月更新の値)
** 正確には「有鱗目の20%」。ワニ類、カメ類で胎生はみつかっていません。 King and Lee, 2015. Ancestral state reconstruction, rate heterogeneity, and the evolution of reptile viviparity. Systematic Biology, 64: 532-544.
*** Lynch and Wagner, 2010. Did egg-laying boas break Dollo's law? Phylogenetic evidence for reversal to oviparity in sand boas (Eryx : Boidae). Evolution, 64:207-216.