飼育係のasazooブログ! 動物の様子や飼育の話題など安佐動物公園の日々の様子を飼育係がお届けします!

2020/05/31はちゅうるい館の仲間たち(10)ボアコンストリクター

みなさんこんにちは。じゃいです。

 

前回の更新から少し日が経ってしまいましたが、
その間に、はちゅうるい館の閉鎖が解除されております!
館内の換気ができるように工夫をしてはおりますが、どうしても観覧通路が狭い建物です。
"3密"になりすぎないよう、皆様のご理解とご協力をお願いいたします。

 

さて、今回はボアコンストリクターをご紹介したいと思います。

 
P1130823.JPG

 

"ボアコン"の呼び名で通っている、大型のヘビです。

メキシコ以南の南米に広く生息しており、地域によって体色や模様には違いが大きいようです。
世界中で飼育されている数も多く、またヘビ革として流通することも多い種です。
全長4mを超える記録も残っていますが、安佐動物公園の個体は2mほど。まだ大きくなれそうです。
とはいえ、あまり広くない部屋で飼育しているので、ゆっくりと育ってほしいな...と思っています。

 

さて、この ボアコンストリクター という名前、なんだか小難しい名前ですね。
実はこれ、学名 Boa constrictor をそのままカタカナ読みした名前なんです。

 

皆さん「学名」ってご存知ですか?

聞いたことくらいある、という方が多いでしょうか。

 

生き物の名前は、世界各国でその国の言葉で名前がつけられています。
例えばヘビなら、snake(英語)、serpent(フランス語)、schlange(ドイツ語)、змея(ロシア語)...などなど。

世界中の人がある生物の話をするときに、各国の文化によって、
同じ種類の生物にバラバラの名前がついているのはとても不便ですね。

 
そこで、今はもう公用語としては使われていない「ラテン語」を用いて、

全ての生物種に"世界共通の名前"がつけられることになりました。
それが、「学名」です。

英語などと間違えられないよう、斜体文字で書くことが決められています。

 

例えば、ヒトの学名は、Homo sapience(ホモサピエンス)。
学名は全て「属名」と「種小名」の2つセットで表されます。
属名の "ホモ" はラテン語で "人間" という意味、種小名の "サピエンス" は "知恵" という意味なので、
Homo sapience という学名は "知恵ある人" という意味の名前になります。

 

前半の「属名」は名字のようなもの、後半の「種小名」は下の名前のようなものでして、
遺伝的に近い生物には同じ属名がついていることもあります。
例えばライオン (Panthera leo)、トラ (Panthera tigris)、ヒョウ (Panthera pardus) がそうですね。
安佐動物公園のライオンたちに会える「パンセラビュー」というスポット名も、彼らの属名が由来です。

 

そして本題のボアコンストリクター(Boa constrictor)ですが、
"ボア" はラテン語で "大きな水ヘビ"、"コンストリクター" は "締め付けるもの"という意味なので、

Boa constrictor は "締め付ける大きな水ヘビ"という意味になります*。

 

P1130874.JPG

獲物を捕まえると写真のようにグルリと巻き付いて、

絞め殺してから食べる特長が名前の由来です。かなり迫力のある名前ですね。

 

ほとんどの動物は、生息している国の人々に発見され、その国の言葉で名前がつけられるのですが、
ときどき学名が先につけられて、あるいは学名が先に広がって、呼び名として定着することがあります。
ボアコンストリクターも、その一例ということですね。

 

ラテン語と聞くと、なんだか小難しい気もしますが...皆さんが知っている学名、意外とあるんですよ。

 

例えば、ティラノサウルス (Tyrannosaurus rex)、トリケラトプス (Triceratops horridus) といった恐竜!
実は彼らの名前のほとんどは、学名の属名をカタカナ読みしたものなんです。
既に絶滅してしまっている動物は、「生息している国の言葉」での名前は付きようもないですよね。

 

他にも、コスモス (Cosmos bipinnatus)、シクラメン (Cyclamen persicum) など、
海外から輸入された植物は、学名がそのまま日本の名前になっていることも多いです。

 

逆に、ダイミョウセセリという蝶の学名が Daimio tethys だったり、
マツタケの学名が Tricholoma matsutake だったり、
コウベモグラの学名が Mogera wogura だったりと、日本語が由来の学名もあったりします。
...モグラはローマ字で正しく書くと "mogura" ですから、昔の外国人研究者が書き間違えて、

"mogera" "wogura" になってしまったんだろうな...という当時の様子も想像できたりします。

 
こうして色々とみてみると、難しそうな「学名」も、ちょっとだけ身近に思えてきたりしませんか?

 

P1130819.JPG

 

さてさて、ほとんどボアコンストリクターの話ではなく、学名の話になってしまいましたが...
はちゅうるい館に限らず、動物たちの前に設置されている種名看板には、大体この学名も記されています。
みなさんの好きな動物には、どんな"世界共通の名前"がついているでしょうか?
その名前は、いったいどんな意味なんでしょうか?
なんてことを考えながら動物たちの名前を見てまわると、新しい楽しみ方ができるかもしれませんよ!

 

それでは、また次回!

じゃい

 

* "Boa constrictor", www.reptile-database.org