飼育係のasazooブログ! 動物の様子や飼育の話題など安佐動物公園の日々の様子を飼育係がお届けします!

2020/07/05はちゅうるい館の仲間たち(15)オオサンショウウオ

皆さんこんにちは。じゃいです。

 

7月に入りましたが、梅雨模様が続いてジメジメした日々ですね。

今回は、はちゅうるい館にいる爬虫類ではない動物、オオサンショウウオを紹介します。

写真 2019-08-04 16 35 57.jpg

 

安佐動物公園の看板ともいえるオオサンショウウオは、爬虫類ではなく両生類です。

カエルやイモリなども爬虫類に間違えられることがありますが、これらも同じ両生類の仲間ですね。

 

オオサンショウウオ Andrias japonicus は、西日本の綺麗な河川にのみ生息する、日本固有種です。

その名の通り、全長は1.5mに達することもある、世界最大級の両生類です。

最大""というのも、中国に生息するチュウゴクオオサンショウウオ Andrias davidianus の方が

体は少し大きいので、"世界最大"というとチュウゴクオオサンショウウオを指すことになります。

 

また、1種だと考えられていたチュウゴクオオサンショウウオは、

近年の集団遺伝学的な研究によって、3種に分けられることになりそうです*

これらの種の存在があるので、決して大きさナンバー1の両生類ではないのですが、

それでも最大級の体がもつ迫力と、無防備にゆっくり動く可愛らしさのギャップが、

オオサンショウウオのもっている魅力の1つです。

  

安佐動物公園では開園当時より、広島県内に生息するオオサンショウウオの生態を研究しています。

近年は共同研究シンポジウムを開催したり、テレビの密着取材が入ったりと、

そんな調査研究の様子をアウトプットする場も増えてきました(過去のブログ参照!)。

 

が、忘れてはいけないのが、生きたオオサンショウウオの姿を、動物園で皆さんに見ていただくこと。

なんですが、オオサンショウウオ展示水槽の前で、

「...おらん」

と呟いて、個体を見つけられずに去ってしまう方が多いのです...

 

そこで今回は、「はちゅうるい館のオオサンショウウオはどこにいるの?」かについて、

お話ししたいと思います。

 

GS隠れ家.jpg

こちらが、オオサンショウウオの展示水槽の様子です。

今は6頭がここで暮らしていますが、確かに彼らが動く姿はあまり見ることができません。

というのも、オオサンショウウオは夜行性の動物です。

皆さんが見に来られる昼間のうちは、巣穴の中や岩の下などに隠れていることが多いんです。

 

この水槽のなかにも、上の写真に矢印で示した位置に、隠れ家の入口があります。

よく見ると、それぞれの出入り口から、顔や尻尾を出していることがありますので、

このあたりは注意して見てみてください。

 

P1140143.JPG

 

左端にある人工巣穴は、アクリル越しに中が覗けるようになっています。

が、巣穴の中は暗く、オオサンショウウオの色も黒っぽいので、気付いてもらえないことも多いのです...

そこで、もっと見やすくしてみようと思い、赤いライトで巣穴の内部を照らしてみました。

 

P1140146b.jpg  

これで、巣穴の中のオオサンショウウオの姿も、見やすくなりました!よね?

1階の夜行性動物の展示でも使用していますが、赤い光は、夜の動物たちが感じにくい光なんです**

オオサンショウウオにも試してみたところ、彼らも赤い光を嫌がらない様子なので、安心しています。

 

この季節、日によって入る巣穴は違うようですが、多いときは4頭もこの巣穴にいることがあります。

見やすくなったオオサンショウウオ、「いつも見れない!」という方こそ是非、見に来てくださいね。

 

...とはいえ、野生本来のオオサンショウウオは、そもそも見つけにくい動物だったりします。 

DSC_3684.JPG

上の写真にオオサンショウウオが写っているのですが、どこかわかりますか?

体の模様が川底の岩にそっくりで、周りに上手く紛れていますよね。

昼間は隠れていますし、夜は夜で目の前に居ても気付かないかもしれません。

 

多くの野生動物は、敵や獲物に見つからないよう、目立たない場所で生活しています。

そんな彼らの姿を、気軽に皆さんに見ていただくのは動物園の大事な役割ですが、

一方で「人から見られないように隠れて、動物が安心できる環境」を作るのも飼育係の仕事です。

 

いつ見に行っても動物が目の前にいる、そんな展示も見ていて楽しいものですが、

どこかに隠れている動物をじっくりと探してみる、そんな自然に近い環境を体験していただくのも、

動物園でできる楽しい非日常体験じゃないかなと、個人的に思っています。

 

私たちの管理が行き届いておらず、ただただ見えにくいだけになってしまっている場合もありますが...

動物たちにも、観に来ていただく来園者の皆さんにも、優しい展示にできるよう、

色々な事を少しずつ改良していきたいと思っています。

ので、ぜひ何度も来ていただいて、動物園を応援していただけますとありがたいです。

 

GS隠れてる.jpg

ちなみに正解はココでした!皆さんわかりましたか? 

 

さてさて15回に渡ってお送りしてきました「はちゅうるい館の仲間たち」ですが、

これで現在展示に出ている仲間たちを全てご紹介できました!

ので、連載を一区切りさせていただきたいと思います。

 

現在「準備中」の部屋もありますし、展示の出番を待っている動物もバックヤードにいますので、

彼らが展示に登場したら、また新しい仲間たちをご紹介したいと思います。

 

毎度楽しみにしてくださっていた方々、ありがとうございました!

この記事の内容を踏まえて、はちゅうるい館を楽しんでいただけたら何よりです。

 

それでは、また次回!

じゃい

 

 

* Turvey et al., 2019. Historical museum collections clarify the evolutionary history of cryptic species radiation in the world's largest amphibians. Ecology and Evolution, 9: 10070-10084.

 

** シュミット-ニールセン,2007. 動物生理学-環境への適応 原著第5版.沼田英治、中嶋康裕訳.東京大学出版会.