2020/05/09はちゅうるい館の仲間たち(5)ニホンマムシ
皆さんこんにちは。じゃいです。
回を重ねるごとに内容が長くなってきたという噂もありますが、
今回も元気に仲間たちを紹介していきます。
第5回は、はちゅうるい館で唯一の毒ヘビ、ニホンマムシです。
北海道から九州まで、日本に広く生息している毒ヘビです。
平地から山地の森林や茂みでジッとしていることが多く、
全長は45~60cmくらい。ネズミ、小鳥、トカゲ、カエルなどの小動物を食べています。
私たちに最も身近な毒ヘビでもある、ニホンマムシ。
毒性は強く、人間の死亡事故が起きてしまうこともあります。
咬まれると大変なマムシですが、その牙はどんな形をしているか知っていますか?
マムシは全ての歯に毒があるわけではありません。
一番前にある大きな牙だけ管が通っており、
頬にある毒腺で作られた毒液が、この牙の管を通って獲物に注入されます。
また、この牙の根本は皮と肉に覆われています。
普段は根本から内側に折りたたまれていて、口を開けたときだけ飛び出てきます*。
そして、毒牙以外の歯は意外と小さいんですね。
マムシが獲物を見つけると、口全体でガブリ!と咬むのではなく、
ブスリ!と牙を突き刺して、毒液を注入します。
そして、ほとんどの場合、ずっと咬み付いたままではなく、獲物を一度放します**。
相手が毒で弱ってくるのを待ってから、ゆっくりと飲み込むのがマムシの狩りのスタイルです。
また、マムシは夜行性のヘビです。
夜の闇の中でも獲物を捕らえられる秘密として、温度センサーをもっているんです。
目と鼻の間にある「ピット器官」と呼ばれる部分で、周りの赤外線や熱を感知しています。
サーモグラフィーのように相手を見つけられるので、真っ暗な森の中でも獲物を逃しません。
ちなみにこのピット器官、マムシの英名「pit viper」の由来にもなっています*。
ということで、怖いマムシの毒ですが、基本的には獲物を捕まえるために使うものです。
ただし、一つ覚えておいてほしいのですが、ヘビはみんな臆病な動物なんです。
マムシが茂みの中で休んでいたとき、いきなり目の前に大きな人間が現れたら...びっくりしますよね。
逃げようとしたけど、人間が手を伸ばしてきて、逃げるのが間に合わなさそうだったら...
マムシも自分の身を守るため、必死でその手に咬み付きます。
彼らも決して人を襲いたくて襲ってるわけではないこと、知ってもらえればと思います。
動物園内でも、ときどき野生のマムシを見かけます。
マムシに出会わないためにも、園路をはずれて茂みに入らない!
マムシを脅かさないためにも、マムシを見つけても手をださない!
...ようにしましょう。もちろん動物園外でも、気をつけてくださいね。
はちゅうるい館では、ガラス越しで安全にマムシを観察することができます。
三角形のかっこいい頭部、実はきれいな体の模様など、
ただ危ないだけじゃない、マムシの魅力を見つけてもらえたら嬉しいです。
それでは、また次回!
じゃい
*リリーホワイト, 2019. ヘビという生き方. 監訳 細将貴, 東海大学出版, 264p.
** Barr et al., 1988. The predatory strike behavior of the Mamushi, Agkistrodon blomhoffii blomhoffii, and the Malay pit viper, Calloselasma rhodostoma. Japanese Journal of Herpetology, 12: 135-138.